自然界に存在し、天然の食品(マッシュルーム[ツクリタケ(Agaricus bisporus)]等のキノコ類)中に存在する毒物である。弱いながらも発がん性(変異原性)を有し、腫瘍を生じる可能性がある。薬事法に定める劇薬「アガリチン(アガリシン酸)」(agaricin)とは別物である。(agaricinはメシマコブやサルノコシカケに含まれる毒物である。)
ヨーロッパでは、マッシュルーム(ヨーロッパにおけるキノコの一般名)に含まれる発がん性物質として以前から注目されており、2004年北欧5カ国(デンマーク、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)閣僚会議(The Nordic Council
of Ministers)において、詳細なリスク評価が行われている。また、JECFAにおいても自然毒(Naturally Occurring Toxicants)として評価するように提案されている。(2006年現在未着手)
一般にキノコの成分は産地や栽培方法、採取時期等により異なるため、同一種であっても常にアガリチンが検出されるとは限らないが、ツクリタケについては80〜1700mg/kg、平均200〜400mg/kg(wet weight)程度のアガリチンが検出されている。
保存(低温冷蔵、乾燥、凍結等)、調理(煮る、焼く、煮る、揚げる、炒める等)により、マッシュルーム中のアガリチンの含有量は半分程度に減少する。また、缶詰のマッシュルームは、生のマッシュルームに較べて、アガリチン含有量が10%以下に減少している。しかし、(急速)凍結乾燥ではほとんど減少せず、2110〜7800mg/kg(dry
weight)のアガリチンが検出されている。
松茸(Armillaria edodes)についてはアガリチンが検出されなかったという報告があるが、椎茸(Lentinus edodes / Agaricus edodes)についてはごく微量(0.82mg/kg)のアガリチンが検出されたという報告と、アガリチンは検出されなかったという報告がある。ヒラタケ[oyster
mushroom](Pleurotus ostreatus)についても、アガリチンが検出されたという報告があるが、報告値が500mg/kg以上と大きいにも関わらず、その後、検出されなかったという報告があることから、当初の検出されたという報告については疑問視されている。
カワリハラタケ[ヒメマツタケ](Agaricus blasiliensis / Agaricus blazei)についても、アガリチンが検出されたという報告と検出されなかったという報告がある。測定されたものについても、2000mg/kg(dry weight)を超えるものから、不検出のものまで様々であった。
北欧におけるマッシュルームのリスク評価では、北欧の一人当たりの平均的なマッシュルーム摂取量(0.6〜2.4kg/year)において、2.1〜36μg/kg body weight/dayのアガリチンを摂取していると推定し、生涯発がんリスク(マッシュルームを一生涯食べ続けた場合、がんが発生する可能性)を最大でも50/100万から200/100万以下と見込んでいる。
日本における一人当たりのマッシュルームの摂取量(0.1〜0.2kg/year)から考えて、日本における生涯発がんリスクは最大でも20/100万と予想されるが、マッシュルームの国内生産量(年間約2500トン)から考えて、輸入缶詰(年間約12,000トン)が消費の大部分を占めると考えられるので、実際のリスクは更に小さいと考えられる。
2006年2月14日